プロの味。
かつてのイノベーションされた料理
Compote faite à ma façon
私流で作ったコンポート
コンポートとは…..。
果物や野菜、時には家畜などを「水又は砂糖水で煮た保存食」という意味のフランス語です。
確か…1985年頃9月のある日、ある地方での話。
今年は葡萄と林檎の出来が良くないため「何か良いアイディアはないかな?」と相談が入りました。
果物が大量に残っている場合はドライフルーツを作るのが一般的ですが、その前提として「味の良さ」を閉じ込める調理法に目を向ける必要があります。
知恵をしぼり、最初に頭に浮かんだのがコンフィチュール(ジャム)。ただ、これも一般的だしな〜。しかも、もうすでに在庫も沢山あるしな〜…と物思いにふけていると、ピンッ!とひらめいた。
ヨーロッパの家庭では果物や野菜が余ったり、多少出来が悪かったりすると登場する昔のおばあちゃん譲りの調理法があります。そう、これだ!「コンポート(=ごった煮)」を作ろう!
「葡萄・林檎に合う野菜はなんだろな?」早速農家のオヤジさんに電話。「ねえねえオヤジさん、ところで葡萄と林檎以外に、薩摩芋や他の野菜って無いの?」「あるよ〜」見事的中!薩摩芋が余っていた。
となると…..そうそう確か二ヶ月前に杏を大量にドライフルーツにしたなぁ〜。よし!これも入れよう!
そうこうしているうちに頭の中で「キラリーン」とプロのひらめきが次々と細胞分裂し始めた。
皆さん、これから説明する「私流で作ったコンポート」はね、なんと実際に約35年前に僕が作ったレシピを、日本の素材で再現したものなんです!
この料理を通じて、出来が少しだけ良くなかった素材たちでもこんなに美味しい夢のある一品にイノベーションできることを知ってもらいたかった。
全ての素材には力がある!その魅力を内側から引き出してやる。これぞプロの味!
まずは、薩摩芋(太めで大きめ)2本をよーくタワシで擦りながら水洗いして、厚さ5㎜程のいちょう切りにする。そして10分程流水にさらして時々混ぜる。
大玉の林檎2個も同じように皮のまま水洗いして、いちょう切りにする。
大きめの鍋に水にさらした薩摩芋を入れ、その上にかぶせるように林檎を入れる。
そして、ヒタヒタになるくらいの水を加えて、中火にかける。(この時に薩摩芋と林檎の重さの3〜5%の甜菜オリゴ糖蜜を加える)
デザートにしたい人は10%加える時もある。甘味の判断は食べてもらう人のシチュエーションに合わせて決める。
薩摩芋が火に通るまで、上のムービーのようにプクプク沸騰している状態で林檎が鍋底に行かないように注意しながら、よく混ぜる(ここ大事です、後で味に影響が出ます)
15分くらいかな、薩摩芋に火が通ったら弱火にして、薩摩芋と林檎をよーく上下左右と混ぜる(形が崩れないように注意)
前日からドラフルーツをヒタヒタのグランマニエでマセレしておく。(今回は、マスカット・ビューティーレーズン・デーツ・アプリコットを使用した)
弱火にして、林檎にも火が通った時点でフルーツマセレを加える。(漬け込みに使ったグランマニエは残しておく)
レモン汁を加え、グランマニエを加える。
(量としては僕は100ml加えるが、これは非常に多い)さらに弱火のまま10分程煮詰める。常温で冷まし、冷蔵庫に一晩ねかせる。
器に盛り付け、マセレに使用したグランマニエを好みの量かけて仕上げたら、出来上がり。
いつの間にかこの「私流で作ったコンポート」お客様のリクエストに応えてお土産用に販売を始めました。作る量も信じられない程の数になり、保存食なのに毎日大量に生産しました。
きっかけは満足できなかった農作物たち。
「どうやったら美味しくできるかなあ」
手に入る素材たちに集合をかけて、私流のフィロソフィーから閃き生まれる料理。35年前のイノベーションキュイジーヌ。
日本には、美味しさを引き出すイノベーションに巡り合えず、まだまだ日の目を見てない素材たちがいます。
彼らが持っている素材の力に焦点を当てた料理を沢山作り続けて、皆様を口福の世界へ誘いたいと願っています。
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