独自性+ブルゴーニュ地方郷土料理
by monsieur · 2020年7月24日
ヌーベルキュイジーヌ と ブルゴーニュ風
今から30年前、打ち合わせ中に「鴨をテーマに何か新しい料理を」と議題に上がりました。時代は「正しくヌーベルキュイジーヌを」と流行の様に風潮していた。(ここから更に30年前から新しい手法の料理は「ヌーベルキュイジーヌ」として取り入れられていたそう。)
当時のフランスでは、それまでの濃厚でこってりした味付けの伝統的フランス料理に代わって、食材の持つ自然な風味や質感、色を重視した「軽く繊細なスタイル」が取り入れられるようになっていました。
ちなみに僕が学んだ原点は、伝統的なフランス料理です。
ではでは、「鴨をテーマに、どうしたらヌーベルキュイジーヌになるの?」というところからスタートした商品開発物語のはじまり。
当時「鴨」と云えば、「鴨胸肉」をローストして柑橘系のソースで食するのが伝統的かつ代表的な料理でした。
その為「胸肉」に比べて「もも肉」はそれほど貴重価値がなく、代表的な調理法も「もも肉」はコンフィ(脂でゆっくり低温調理)でした。
当時からあまのじゃくだった僕は、わざと「どちらかというと影に隠れた鴨もも肉」を選んで、開発を始めました。
ヌーベルキュイジーヌは「素材のもっている味そのもの」を引き出し、軽く仕上げるのが特徴です。
先ずは「鴨」について、続いて「もも肉」について勉強し、試作を続けました。
最初に気付いたのが、鴨肉の中でも安いもの、その中でもさらに安い部位であった「もも肉」には「それなりの理由」があるということ。
そして、「鴨もも肉」は何日も何日も煮て、やっとふわふわ食感の美味しさが出てきます。試行錯誤しながら気付いたのは、「鴨もも肉」自体にソースや鴨脂の味が染み込んで、より引き立てた味になっているということ!
心が叫ぶ!
「美味しいけど違う!
これはヌーベルキュイジーヌではない!」
ではヌーベルキュイジーヌとは、なんだ!?
そう!素材そのものの「新しい発見」を求真!
美味求真の日々は、さらに奥深く続いてゆく。
そしてある時、ふと原点に帰る。
産地などにこだわり、最高品質の「鴨もも肉」を求めた。
何日も煮込むこれまでの調理法を止め、肉そのものを味わえる煮込み時間(120分〜150分まで)に留めた。
煮込むのに必要な水分もあえて脂や水を使わず、それぞれの素材の美味求真を考慮して、玉葱・人参・セロリの味を引き立てながら野菜達の水分を利用した。
味に深みを補うために、ニンニク・ローズマリー・ブラックペッパーを…。
味を落ち着かせるために、岩塩を…。
最後に「これぞブルゴーニュ!」と言わんばかりに赤ワインをたっぷり、鴨の姿が見えなくなるまで注ぎ入れる。
「ブルゴーニュ地方と云えばワイン」と言うくらい豊富なワインの中でも、ライトボディの赤ワインを意識して選ぶ。これぞ正しく「ブルゴーニュ風」だ!
最後までブルゴーニュ風にこだわりたかった僕は、付け合せの野菜もブルゴーニュ風。
ここでは、マッシュルームとブロッコリーに林檎をバターソテーして、白ワインとブルゴーニュバターを加え、味を整えた。
鴨をテーマに試行錯誤し、開発した独自のヌーベルキュイジーヌ。「最高の主役」の脇を固める「最高の脇役」は、ブルゴーニュバターとブルゴーニュのワインだった。